住宅宿泊事業法及び改正旅館業法の施行が6月15日と迫ってきました。

昨日、一級建築士の北島社長と一緒に、民泊を希望されている2組のお宅に打合せに行ってきました。

1件目は最寄駅から徒歩8~10分の住宅密集地にある築30~40年程(?)の戸建て住宅。今はどなたも住んでおられないそうで、ここで民泊を希望。
2件目は最寄駅からバス&徒歩で12~13分で幹線道路に面した店舗住宅です。1階は飲食店で上の階で民泊を希望。

どちらも『民家』での『宿泊』ですから、いわゆる『民泊』です。近時、世の中は大きく変化しました。
JNTO調べに寄ると、ビジットジャパンキャンペーンが始まった2003年の訪日外国人数は521万人、2011年620万人、2015年1,973万人そして昨年は2,869万人です。クルーズ客が多いので一概には喜べませんが、近年になって急増していることには間違いありません。

背景には世界中が海外旅行ブームであったり、日本のビザ緩和政策や重点国へのインバウンド誘致活動の成果だそうですが、国連世界観光機構UNWTOによると世界各国・地域への外国人訪問者数ランキング は、日本は世界16位でアジア6位と意外と低い印象です。

厚労省と国土交通省が、第1回目の「民泊サービスのあり方に関する検討会」を開催したのは2015年11月。世の中が「民泊」を意識し、違法民泊を始める人が急増。2016年には大田区の特区民泊制度がスタートしました。

以前から元ホテルマンとしてフロント業務を経験した時の視点で宿泊事業の現場や個人的見解を、旅館業infoにも投稿していましたが、結局3年弱の間に、日本国内外を問わず懸念していた痛ましい出来事が次々と起こる結果となってしまいました。

今年6月15日には、ついに新しい制度である「住宅宿泊事業法」が施行され本格的な運用が開始され、旅館業法も大きく改正されます。

宿泊者にとって、その宿が「旅館業法」の施設なのか、「住宅宿泊事業法」の施設なのか、「国家戦略特別区域法の特区民泊」の施設なのかを意識して泊まる人はいないです。私なら目的や予算、立地、館内サービス等を考慮して選びます。つまり、私も民泊運営をお考えのオーナーの希望や事業計画を良くお聞きして提案しないと大外れの民泊運営になってしまいます。

旅館に泊まった時の出来事を想像してください。

まず旅館に着いたら、
入口でウェルカムドリンクが出てきて、お部屋に通されたら浴衣に着替えて温泉に入り、
夜は洋服に着替えて宴会場で食事。時には洋服を汚してしまい急いでフロントでクリーニングをお願いする。館内にコインランドリーがある時もある。
その後は館内のカラオケやバーに行ったり、エステやマッサージで癒され、寝る前に部屋の冷蔵庫にあるビールをいただき就寝。
翌朝は、朝食の後に売店でお土産に地元のお酒を買ってチェックアウト。

ごく普通の行動パターンですが、運営側の視点で見ると旅館業営業許可以外に多くの営業許可や認可申請、届出をして運営されています。民泊運営でも(許可が取得できれば)これに近いことができます。

民泊事業者との競争、ホテルや旅館との競争が激化することを予想するなら、ちょっとした小遣い稼ぎの軽い気持ちでは運営は難しいでしょう。
これらのサービスを備えなければ勝てないということではなくて、宿泊者は、「目的や予算、立地、館内のサービス等」を考慮して選んでくれるわけですから、訪日外国人を狙うなら、当然にインバウンド事情を掛け合わせて戦略を立てる必要がありますし、日本人ビジネスマンやMICEの外国人ビジネスマンを狙うならそれに合った戦略があります。

また、家主居住型(ホームスティタイプ)は、日本人との交流が一つの売りになりますから、小さく始めることが可能だと思います。
私は、訪日外国人が求めているのは、”単なる宿泊施設” では無く、宿泊施設が伴ったサービスと考えています。

個人的には神戸山手インバウンドスクールで得たインバウンドの知識や国内の成功・失敗事例が、アドバイスさせていただく際に大いに役立っております。

又、今までは私が持ち合わせる建築や消防の知識で、話を進めておりましたが、特に住宅は一つ一つに個性や特徴があるので、経験豊富な一級建築士の知識と経験が必須であります。当事務所は東建設計の北島社長と共に行動させていただいており、安心してアドバイスが出来る体制を整えました。
※北島社長は一級建築士で、茨城県潮来市にある『水郷旧家磯山邸』等も手掛けておられ、古民家再生も得意とされております。

民泊運営を検討されている方は、民泊に精通した経験豊富な一級建築士や工務店の協力、インバウンド関連の知識や民泊運営への熱い気持ち、そして許認可の専門である行政書士をチームに加えていただきトータルでご検討されることが成功への早道と考えます。

ちなみに初めに書いた戸建て住宅と店舗住宅の件ですが、現場を見ないとわからないものです!!!
予想に反して(?)一方は住宅宿泊事業法ですが、他方は簡易宿所営業で検討していくことになりました。

親の相続で所有する空き家は、戸建て住宅の運営事例がモデルケースとなり、
店舗住宅は、シャッター商店街で客足が遠のいている飲食店事業者のモデルケースになるな~と考えながら事務所に戻ってきました。

訪日外国人は、日本人にとってあたり前のところにはまり、日本の地を訪れます。ちょっとしたきっかけで、いきなり旅行客が押し寄せるようになった商店街は存在してます。日本人も来なくて死活問題の「深刻なシャッター商店街」でも、簡単では無いですが地域の人々の合意形成と受入体制を整えれば、訪日外国人が押し寄せる商店街に転換できる可能性はあると思います!!